身を晒す

駅までの道を歩きながら

若さの塊のような音を聴いた

伝えたい事が溢れて

宗教的に一定のリスナーを盲信させるような

きっと私も20代のはじめのころ

何も気にしない心が持てていたら

こういう音をやっていたのだろう

そんな気持ちになった(と思い作曲者を調べたら30歳と私と大差ない年齢だった)

エネルギッシュさは恐れを知らない

その新しさに触れた時

聴き手は恐らくは

熱狂するか顰めっ面をするかどちらかだろう

だがそれが良い

新しさとはそうであるべきだ

人間はいつも何かに触れるとき

無意識のうちに自らの過去を探る

これはあそこで知ったことがある

これはあの音の感じがする など

類推をしたくなるのは人間の証

だからこそ聞き馴染みの薄いような

新しいものは異物に感じ

不安や嫌悪感を抱く人は多い

それも自然な反応の一方で

新しいものを追い求める心は

生き物としての進化には重要なことだ

自分の見知ったものばかりでは

安心安全しかないものなら

人はどんどん退化して劣っていくだろう

新しさに身を晒す

命の躍動を思い出す

一度の命を楽しんで