生きた物に成り行く

薄闇の室内に レモンの香りを広がらせて

寝息と共に優しく上下する白い毛布を横目に

静かにまぶたを閉じる

近づいては遠ざかる電車の音

その中に何人の人が揺られているだろう

まだ今日が続いている人を思い浮かべては

その想像を消す

思考のまぶたを閉じれば

全ての意味から解放される

ただこの時間に 体が埋まっていくように

私はただの物のように

あの時計となんら変わらず

なんの裁きもせず

なんの裁きからもすり抜けて

ただ存在している

喜びからも 悲しみからも遠ざかる

生きた物に成り行く