ライブの数日前のことである。
電車に乗り座っていた私。
朗読を覚えるために必死で心の中ブツクサ唱えていた。
すると隣に座っていた男性がいきなり立ち上がり
男性の目の前にいた女性が謝りながら腰をかける。
「ほや!?(貝のことではない)」と思ったが
どうやら気分が悪くなってしまったようだ。
全然気づかなかった…なんたる不覚…
私の隣に座るその女性は
スマホの電源をつけたかと思えば
俯いて眠るような状態になり
また目覚めて電源をつけては…みたいな状態だった。
私も前に電車で座っていて
気分が悪くなった当事者なのでわかるが
こういう時って周りの対応が難しい。
席に座る以外のことで出来ることはなにがあるだろう。
「大丈夫ですか?」とみるからに大丈夫じゃない人に声をかけても
声を返したり愛想笑いをするのもキツイかな…と思ったり
水をかってきても荷物が多いしさらに荷物にさせちゃうなぁ…とか
色々頭でぐるぐるしてしまって
歯痒い気持ちになる。
しかし心配がまさって、
女性がLINEを誰かに打ち始めたのを横目で見る。
「きもちわるい。。。」と書かれていた。
何か病気があるとかどういう状況なのかを確認したかったので
気分がいきなり悪くなった私と似た感じなのかな?と想像。
それから彼女がようやっとLINEを打ってる内容から
誰かが近くの駅まで迎えにきてくれるそうだった。
それで一安心した。
私の隣に座っているその女性の隣に座っているのは
サラリーマンのおじさまだった。
そのおじさまの顔をふっと見ると
おじさまも女性のスマホをガン見していた。
多分おじさまも「大丈夫かな?どういう感じなんだろう」と
心配していたんだと思う。
そして最寄駅につく。
歩けなさそうだったら声かけようかと思っていたが
思ったよりちゃんと歩けていたので改札まで後ろから見送る。
それにしても席を譲ってくれた人はもちろん
その女性の両脇に座っていた沈黙の人々も
彼女の心配をオロオロしていたかと思うと
世の中ってこういう沈黙の優しさたくさんあるんだろうなぁと
心があったかくなった。