抱擁

剥き出しの心でいられる相手はいるだろうか。

剥き出しのままで傷ついてはたまらないから

人は知らず知らず鎧を身につける。

それは仕方がない。

傷が深いほど生きていけなくなるから

生きるためにはせざるを得ない。

 

刃物で刺されなくても

見えない傷はいつ治るのか

全治何ヶ月なのかがわからない。

一生痛みをもちながら生きる人もいる。

 

自分の未熟さを未熟さのままでいられる存在があれば

その人の前では裸でいられるだろう。

深く深呼吸したその呼吸をじっくり味わうような

ゆったりとした居心地の良さ。

なんの焦りも不安も感じなくてすむ場所。

それを味わえる居場所となる人はいるだろうか。

 

自分が誰かにとってそんな存在でいられているだろうか。

裸のままの相手の未熟さを

抱きしめてその心に口づけをする。

そんな存在に自分はなれているだろうか。

 

ジャッジもなく非難もなく調教もなく否定もない

ただそのままのそのものを祝福しその力の美しさを信じる

そんな存在に自分はなれているだろうか。