エンドロールまで口づけを

テーブルの上に置いてあるグラスを片付けると

上着を持って玄関へ向かう

このドアを開けるのは何回目になるだろう

長い階段を駆け足で降りる

今この瞬間に合うのはどんな曲だろう

手を繋いで寄り添い歩く老人の夫婦には

Chet bakerの甘いラブソングを

僕もそうだな 同じやつが欲しい

画面いっぱいに映る

この人生がひとつの映画だとするなら

今は問題の多い場面になるだろうか

恋するものと悩めるものは詩人になる

街の輝き 部屋の沈黙さえも詩に変わる

綺麗だな

月が欠けていくよ

ある人の目には幸福な月に

ある人の目にはセンチメンタルに映るのだろう

どれも必要な場面に変わりない

問題のない映画を誰が好んで見るだろう

僕に子供ができたなら

同じことを伝えるだろう

あなたの悩みはあなたの敵ではありませんと

愛することさえ きっとできる

派手である必要はない ささやかな幸せを

陽が射して明るくなりだした毛布の白さに包まれて

安心感の中で

また目を閉じる温かさ

ハッピーエンドの映画を見たい

愛するものと愛されるものが

報われてほしい

安心感に包まれて

おやすみの口づけの途中で眠りについて

目が覚めたら隣に愛するものがいる優しさ

スローモーションで暗くなって

エンドロールが流れ出す