事実を蔑ろにして
美しい物語が真実だと信じたいのは
弱さが作り出す幻想だ
その幻想を現実だと思い込み
自分の無知と傲慢さを
見つめる冷静さを失くし
正しさという刃物を
相手に突きつける時は
同時に自分の後頭部にも
必ず誰かからの刃物が突きつけられている
正義という安定剤を飲み込んで
自分を保つための正義がぶつかりあう
互いに敵視しながらも
自分の存在を実感するために
お互いがお互いの存在を皮肉にも必要としている
共依存のような中毒の沼にのめりこんでいく
それで本当に自分を幸せにできるとでも思っているのか
幻想のように掴むことも事実を見つめることもできない
そんな不確かなもので幸せになんてなれるのか
ましてや自分以外の世界を幸せにできるとでも
本当に信じているのか
弱さとは共存しなければいけない
弱さも醜さも自分の中からなくなることはない
見ないふりをして不確かなものを信じて救われたふりをしていては
自分を騙しているのと変わらない
そういう人は愚かというより
悲しい人だ
幻想の世界で戦っている英雄の気持ちになっている
その世界の中では劣勢な状況ほどドラマが生まれる
そのドラマの中で生きている充実を味わっていたい
辛い現実からのストレスから逃れたいから、と
でもそれは幻想だ 夢なんだよその世界は
確かに現実を見つめたって良い気分になどならない
けれどそこから逃げて自分を騙すことはしてはいけない
それは自分を本当の意味で幸せにしない
しかしこれもまた人の弱さなのか
なんとも言えない気持ちでその風景を眺めることしかできない
目の前の出来事を受け止めることしかできない
けれどそれをやめてしまってはいけないような気がしている
自分の中にある愚かさや醜さと
他者の中にある愚かさや醜さを
全てを見つめて一度受け入れる
自分を思い込みの世界に連れて行かないために
自分という人間は無力で大したことのない存在なのだとして
自分自身を赦していくことが
現実を生きていくためには必要だ
自分は強いはずだ すごいはずだ 何かできるはずだ
そう思う気持ちも時には必要だけど
不安をかき消すように唱え続けていると
その強がりに足元をすくわれる
その気持ちが幻想に連れていくきっかけになる