「私はこんなもののために生きてるんじゃない」
そう思うなら、そこから飛び込めばいい。あの海へ。
みんな、自分を通した目でしか世界を見れない。
どんな人だってそうだ。
それなら、君が見たい世界を見にいけばいい。
その時、君は何人かに嫌われるだろう。
何人かに妬まれるだろうし、もしかしたら恨まれるかもしれない。
「あの恩知らずめ」「人の気持ちもしらないで」
「こんなにしてやったのに」
おせっかいな声が邪魔して、君の世界を濁らせる。
君の歩みを止める人間の相手をしてはいけない。
親切という仮面をつけて、君の一歩を塞ぐ人間が必ずいる。
それは友人によって、恋人によって、親によって、
それとも自分自身によって?
でも他人を疑ったり嫌わなくていい、誰も敵じゃない。
悲しかったり、寂しかったり、行き場所がわからないだけなんだ。
だからここにいてほしいと、本当は泣いているのかもしれないよ。
君はそういう人達を横目に、ただ自分が自分に与えた道を泳ぐ。
この海は大しけになる。コンパスなんて見ていられない。
飛び出した自分が馬鹿だったのかと思う。
あのまま他人と前にも後にも進まずにいればよかったのか。
こんなに嫌われて、失って、なんだったんだ。
ただ、私は私の世界を見たいだけだったのに。
波が次から次へやってくる。
ごうごうと風と水しぶきが口の中へ入る。
息が苦しくなる。
このままもう終わってしまうのかと意識が途切れる少し前、
私がその腕を思い切り引き上げる。
新しい大地へ。
それでも私たちはまだ、旅の途中だ。