感傷はロマンの先端にしがみついている

あなたといるまま死ねたらいいのに

まるで演歌からの引用文みたいな事を言うと

君は頭まで毛布をかぶって僕に背を向ける

ひとり取り残されたような僕は

陽の射さない壁を暫く眺めたあとで

毛布を剥いで君を抱きしめる

柔らかい口づけをしながら

白い肌に思い切り爪を立てると

君は うぅ、と小さく声を出した

痛みと優しさは僕らの間を

いったりきたりして

国道沿いの小さな部屋は

東京の灯りのひとつともならず

陽が暮れても暗いまま

痛みと優しさの混ざる場所が

恋なのだと考えていた

痛みと優しさの混ざる感情を

切ないと人は呼ぶのだろう

優しさだけでは物足りず

痛みだけでは苦しいばかりの

もたれあうように存在する

それが恋なのだと考えていた

それじゃぁ愛はどんなものなの?

母親に尋ねるように君は言う

そうだな、愛の話はまた次回だね。

そう告げると僕らは少し笑いあって

また元の僕らに戻るようにふざけあった