行き場のない人

蜷川幸雄さんが亡くなった。

川口出身で、私の仲の良い友人のいとこが蜷川さんの元で演技をしていたので、

お話は良く聞いていたので訃報に驚いた。

 

その友人のいとこはかなり破天荒な人生を生きてきた方なようで、

暴力的な事をしていたり、器用に生きることの出来ない方で

演技をしたいと無理矢理蜷川さんの会社に侵入したようです。不法侵入なみに。

そこで蜷川さんに向ってとある小説をそらで読みだし、(全部暗記していたみたいです)

自分の人生の話しをしたところ、君は犯罪者になるか役者になるかどっちかの人生しかない、と蜷川さんからお話をされたみたいです。

 

その話しを聞いて涙がでそうでした。

何かを表現する者というのは、

器用に生きられない、下手したら人の道からそれてしまうかもしれない、

そういう人間だからこそだせる味があると思います。

孤独や、憎しみや、悲しみや、苦しみを人一倍経験した者だからこそ表現できる、

代弁できる言葉。

 

私はそういう人間に触発されてきたし、自分もそういう人間でありたいと思って生きているので、

世間一般から見たら落ちこぼれと罵られてしまいそうなその人を

受け入れて育て上げようとしていた蜷川さんの存在になんとも言葉に表せない気持ちになりました。

人は人と出会うことで自分が何者かを知っていく。

私は川口に生まれ育って本当に良かったと今日心から思った。

この街だから出会えた人がいる。