理由などない。

愛想の良い彼女の横顔を眺めていた。

穏やかな海の表面は

太陽の光が落ちてキラキラと輝く。

その近くで幼い子らは声をあげ

恋人達は静かな微笑を浮かべる。

その健全さが影を落とすのは夜の海。

誰も近づこうとせず、

また誰をも受け入れない。

そして何事もなかったかのように

翌朝には淡い光を表面に纏わせる。

そして何事もなかったかのように

翌朝には綺麗に着飾って街を行く。

誰も彼女の深淵に触れることはできない。

どんな男も触れることはできない。

汗ばむ肉体の奥に冷たい孤独が横たわる。

他人の境界線はどうしたら壊れるのだろう。

私の話なんてつまらないから

そう申し訳なさそうに呟く彼女の

深淵に触れられたのなら

私はそんなことを考えていた。