絶望の横に希望があると言ったのはやなせさん。
同じように、苦しみの横には甘美がある。
クロールの息継ぎに生への渇望を感じる。
苦しみの横には間違いなく生が横たわっている。
快楽を感じる人間の表情は苦痛の表情に似ている。
眉間に皺を寄せて。
だから苦しみと甘美は切っても切れない。
そのふたつが激しく交わると、摩擦で傷ができる。
これほど勲章に近い傷があるだろうか。
これほど消えなくてもいいと思う傷があるだろうか。
沸騰した湯の中にいて、
頭から氷水をぶちまけられるような体感。
銃口を後頭部につきつけられながら、
頭を優しく撫でられるような感覚。
心にうちこまれた弾丸は
死ぬまで抜けなくて構わない
それならいつまでも
見る景色が変わっても
共に歩んでいる事と相違ない
それが苦しみと甘美の関係性。
幸福を味わいたいなら、
その前に思い切り不幸を吸い込むのが一番だ。